職人技を世界に発信し、ものづくりが存続できる仕組みをつくりたい
京都市立芸術大学でプロダクトデザインを学び、得意の英語力も活かして、日本とアメリカの大手自動車メーカーのデザイン部門に10年以上勤めた水木さん。その後、東京で会社員をしていたときに、「伝統工芸に関わる日本の職人技を、世界中の人に見てもらいたい!」という想いを募らせます。かつては、「退屈な京都を出て、海外でバリバリ働きたい」と思っていた水木さんですが、仕事や旅行でたびたび海外へ行くうちに、京都のまちや、伝統工芸のものづくりの素晴らしさに魅せられるように。特に、親戚の100年続く染物屋の職人技に触れたときは、「こんなにすごい職人さんが身近にいたなんて」と衝撃を受けました。日本全国の工房や職人技を見て歩くことで、経営不振や職人不足といった業界の問題にも直面。「素晴らしい職人技を世界に発信し、商品が売れて儲かる仕組みをつくれば、廃業するところも少なくなるのではないか」と考えるようになりました。
そんな水木さんの転機は、LEDのファイナリストになったこと。第2期最多、12社のサポーター賞を受賞。さまざまなアドバイスを受け、職人技を動画にして発信することに着目します。2016年12月に、スマホで自作CMが気軽につくれる動画アプリ「WAZAPTURE(ワザプチャー)」をリリース。2017年には、株式会社TIME and DESIGNを立ち上げました。目標は、地元京都の伝統工芸の職人技に世界の注目を向け、ものづくりが存続できる仕組みをつくること。「マーケットを日本から世界へと広げることで存続の可能性が高まります。また、それらの技術を残すことは、日本の文化を残すことになると思うんです」。
現在は、京都市内だけで約500人の職人さんとつながりができ、伝統を継承しながらも試みる、新商品開発のデザインや相談の依頼が多いという水木さん。「開発費をためて、動画アプリのバーションアップをしたいと思っています」。2018年には、「WAZAPTURE」で作成した職人技の動画を世界に発信する「WAZA SQUARE」を、クリエイター向けの動画共有サイトや、ビジネスに特化したSNSに立ち上げる予定。今後もイベントや講演などを積極的に行ない、「WAZAPTURE」の使い方や必要性を広めていきます。
(先輩からのアドバイス)
私は会社員のときにLEDに応募し、ファイナリストに選ばれたことで自信がつきました。事業実績のない人にも、この機会をぜひ活かしてほしいと思います。京都に拠点をおくファイナリスト同士で交流を深めるなど、仲間ができることはとても心強いですよ。