「早く帰れて楽しく働ける飲食店」を実現した100食限定の仕組み
「早く帰れて楽しく働ける飲食店がしたい」。夫がつくるステーキ丼のおいしさに惚れ込み、「国産牛ステーキ丼専門店 佰食屋」を2012年に開業した中村さん。夫婦で思い描いた理想のお店を実現する仕組みを考案して実行する、二児の母です。現在、3店舗まで増えた「100食限定」を打ち出すお店は、ほぼ毎日ランチで完売。後片付けと翌日の準備が終了すれば、午後6時に全員で帰宅します。この働き方によって、子育て中の女性やシングルマザー、障がいのある人、介護を担う人などの雇用促進につながりました。「100食を売り切ると決めているので、忙しいほうが早く帰れて楽しい。従業員から、そういう気持ちを引き出したかったんです」。がんばった成果が自分に返ってきた、ともに営業マンだった2人の経験が生きています。
LEDのファイナリストになった後、集中的に取材を受けるようになったという中村さん。「これまでは料理を紹介するテレビ番組や雑誌の取材が多かったんですが、LEDが終わってからは、働き方に注目した取材が圧倒的に増えました。Yahooニュースでは、食材ロスがないことも取り上げていただいた」。そして、ファイナリストになった一番の成果は、自分自身の成長と話します。「レッドカーペットのある大舞台に立ち、約400名の前で発表することになって、自分を見つめ直し、事業を具体化して考えるという作業を積み重ねました。肩書きは社長でも店長の意識しかなかった私が、LEDが終わって、ようやく経営者になれたと思えたんです」。
「私たちが今後やっていかなければならないのは、いまの従業員の生活を守ること。だから、事業拡大には非常に慎重です」と明快な中村さん。本当にやりたいことなのかを見極めて、夫婦が信じた道を進んでいこうと考えています。「100食限定のプランも、初めは周りからとても反対され、中小企業診断士や税理士の先生からこてんぱんに言われました。でも、成功すると信じてここまでこれたので、今後も自分たちの営業マンとしての感覚や野生の勘を大事にしていきたい」。中村さんのめざす道は、まだまだ始まったばかりです。
(先輩からのアドバイス)
「中村さんは事業も成功しているし、ファイナリストになって当然」のようなことをよく言われますが、小さな飲食店の店長だった私が、LEDに応募することで成長できたんです。目の前にあるチャンスを逃さず、失敗してもいいという気持ちで、まずはチャレンジです。